「ATMOSPHERE by Krallerhof」の設計を手がけたハディ・テヘラーニ氏は、「このプロジェクトでは、通常のプロジェクトとは異なる点がたくさんありました。立地や建築技法の選定から始まって、オーナーの方々がこちらの提示した設計図をそのまま受け入れたこと、そしてプロジェクトが完了するまでの期間が、およそ13ヶ月という記録を打ち立てたこともそうです。」と語る。
2023年4月にオーストリア・レオガングで開業したこのウェルネスリゾートの話をする時、イランにルーツを持ち、ハンブルクを拠点として活動する建築家兼デザイナーの彼の熱意がひしひしと伝わってきます。それもそのはず、アルプスに囲まれたこの地に彼が創り上げたものは、最高のリラクゼーション施設というだけではなく、スパ&ウェルネス施設における新たな基準です。このプロジェクトで細部まで入念に計算され設置されたアクサーのデザインオブジェは、機能とデザインの両面で重要な役割を担っています。
ハディ・テヘラーニ氏の大きな特徴は、今回のような大規模なプロジェクトであっても、細部まで彼が決定するというアプローチです。シャワー、トイレの水栓、サーモスタットに彼が選んだのは、ステンレススティールオプティックの アクサーワンコレクションとアクサー ユニバーサルサーキュラー アクセサリーでした。
国際舞台で数多くの賞に輝いてきたテヘラーニ氏はこう述べています。「アクサーはごく当然の選択でしたね。華美ではないがアイコニックである、落ち着いたシンプルなスタイルに違和感なく溶け込む。そして扱いが簡単で、機能に信頼がおける。選択したアクサーの製品は、さりげない細部がどれほど巨大プロジェクトの中で全体の印象をアップさせるかを示す好例です。」
Atmosphere Spaに一歩足を踏み入れた時から、静寂とリラクゼーションの時間が流れ出します。レオガングの山々を臨み、なだらかな麓に建つこのスパは、その広大さによらず静けさと有機的な建築フォルムによって訪れる人をそっと包み込みます。おそらくこのスパは、ハディ・テヘラーニ流の「デザインはすでにそこにあり、環境がそれを決定し、人はただそれに気づけばいい」という、自然に任せたアプローチを体現する最高の例の１つかもしれません。
“山を背景に草地が広がっていて、全体がゆったりとうねる景色を見た時に、この有機的なデザインのイメージが湧きました。この場所を形づくり、象徴するものと一体化できるウェルネス体験を創造するのだと、瞬時に感じ取ったのです。”ハディ・テヘラーニ
木材と石材をふんだんに使用して色味を抑えた館内は、静謐な空気に包まれています。建物の一面を使った全長22メートルにも及ぶガラスのファサードは外部との視覚的なつながりを生むとともに、窓外に広がる絶景へと視線を誘います。しかも驚くことに、この窓は床下に完全収納できるようになっているため、文字通り内と外の境を取り払うことが可能になっているのです。
Krallerhofホテルの周囲に広がる、景色の中心的存在となっている遊泳湖には、50メートルのインフィニティプールが伸びています。湖とそのままつながっているような、全く新しい遊泳体験を提供するオリンピックサイズの温水プールは完全に湖に囲まれていて、年間を通して泳ぐことができます。湖も潜ったり浮かんだり、のんびり泳いだり、ただ近くでくつろいだりと、思い思いの過ごし方ができます。プールは竣工後に敷地内の源泉から引いた湧き水で満たされており、その後の水位は降水と蒸発で自動的にバランスが保たれています。湖の周囲を取り巻く豊かな植物が、この地域の自然の多様性をさらに印象づけます。
ATMOSPHERE by Krallerhofの施設には、複数のサウナルームの他、レストルーム、ヨガスタジオ「Blaue Grotte」、レイクサイドカフェが揃っています。落ち着いた館内の内装に合わせ、シャワーエリアとトイレにはアクサーワンコレクションからミニマルデザインの水栓、モノトーン調のシャワー、革新的なサーモスタットが備え付けられています。
ハディ・テヘラーニ氏は、製品を選んだ理由として使いやすいこと、さらにデザインとステンレススチールの仕上げがインテリアと完璧にマッチすることを挙げています。 「シャワーや洗面のところに来て、さてどうやって使えばいいのかと悩むようなものではダメです。特にスパでは、一目見ただけで何でも使えるようでないと。シャワーを出して止める、この行為が当然の流れでできるのが当たり前です。それだって、リラックスとリフレッシュの要素なんですから。」
Copyright: Hans-Georg Esch
テヘラン生まれ、ハンブルク育ちのハディ・テヘラーニは、多方面で精力的に活躍するデザイナーであり、その作品は世界中のあちこちで目にすることができます。建築プロジェクトとデザインプロジェクトを総合的に扱い、それらのプロジェクトは持続可能性や環境保護の観点からしばしば国際的な賞に輝いています。だからこそ、彼のアイデアは尽きることがありません。デザインのプロセスを、自分自身が触れて感じたものへの反応と捉える彼だからこそ、そこから派生する問いに明確に答えられるのです。