フィリップ・スタルク

アクサースタルクの歩みを振り返る

フィリップ・スタルクが語るアクサースタルク
1994年に登場したアクサースタルク コレクションは、バスルームデザインの革命児であり続けています。過激なまでにシンプルなフォルムと、命の源である水への深い敬意を表現したアクサースタルクは、今も変わらず注目と人気を集める存在です。アクサースタルクのデザイナー フィリップ・スタルク自身がアイコンの誕生秘話を語ってくれました。
水の運搬の原型、ポンプ
アクサースタルク コレクションのアイデアは、どのようにして浮かんだのでしょうか?

PS// アイデアはとてもシンプルなものでした。私自身が、何でもシンプルに捉える人間なので。アイデアは"純粋な水、水の美しさ"です。水を愛する私にとって、水について語る機会を得たのは大変光栄なことでした。私は水辺で暮らしていますし、水はいつでも身近な存在です。水には独特の美しさがある。モノ、ここでは物質的なものという意味ですが、人間がそれと水をつなげようとすればするほど、美しさは失われてしまう。そこで考えたのが、水への深く、しかも構造的な敬意をもってデザインを開発しようということでした。そうしたら、おかしなことに農場が頭に浮かんだんです。昔の農場は、水との結びつきが極めてシンプルです。水源から水が流れ、水路があり、人は桶を持っている。人はポンプで (汲み上げるしぐさをしながら) 水を桶に入れる。そして、ポンプのあのシルエット (手でポンプの形とアクサースタルクのフォルムをなぞる)。水を供給する史上初の物体はポンプであり、それをそのままデザインに移し出そうと思ったのです。
世界初のデザイン水栓:アクサースタルクは、
克服すべき特別な課題はありましたか?

PS// 変な話ですが、一番のチャレンジはトレンドとの闘いでした。サニタリー業界は大変に生真面目でして…。私自身、当時はミニスカートのように2年ごとに変えられる水栓や洗面台とか、おかしなアイデアがあったんです。全くバカバカしいのですが。私が自分のデザインした水栓を発表した時は、奇抜な要素が全くないということで、それはもう驚かれました。当時何人かの人に言われたことを、今でも覚えていますよ。「いや、確かに綺麗だけど、いかにもスタルクって感じじゃないよ。」って。私の返事は、「スタルクらしさって、何?」。「そりゃ、こんな感じの・・(両腕を広げるジェスチャー)」そこでこう答えたんです。「そうか、でも水にそれは要らないでしょ。水そのものが、水の美しさが必要なんだよ。」と。でも (最初の驚きの) 後で受け入れられるようになり、私は…私たちは、この作品がマーケットを完全に変えたのだと断言してもいいと思うのです。
フィリップ・スタルクとのつながりを作ったクラウス・グローエ
(アクサースタルクが発表されてからこのインタビューうけるまでの)25年間で、アクサースタルクに関して印象に残っている出来事はありますか?

PS// 私が覚えているのは、すべてが始まった時のストーリーだけですね。私は素晴らしい子どもを持つには、両親が愛し合っていなければならないと固く信じています。愛をベースにしないプロジェクトは存在しません。25年か、それ以上前のことですが、フォルメンテーラ島にいた時のことです。8月の昼間だったか、とにかく暑かった。そこで自転車に乗った男性を見かけたんです。強い日差しの下で、(苦しそうな呼吸を真似して) 凄くしんどそうだった。その人がこう言ったんですよ。「あ、スタルクさん?ちょっとお話してもいいですか?」って。私は「8月のこんな真昼間に話って…」と思ったんですが、さらにその人がこう言ったんですよ。「私は水栓を作る会社を運営していまして。」で、話が始まったんです。私たちは恋に落ちたわけですね。その男性こそ、クラウス・グローエ*です。とんでもない奴でしたよ。彼はアイデアと情熱に満ち溢れていました。後は同じ屋根の下で、同じテーブルに向かい合い、同じ時間を共有するというお馴染みのスタイルが始まりました。何しろあの時は、二人とも良いアイデアがいっぱいありましたから。彼はいつも「ダメダメ、パリで打ち合わせはしない。ニューヨークもダメ。フォルメンテーラで打ち合わせしないと」って言っていましたけど。
​​​​​​​*クラウス・グローエ:当時のハンスグローエ社 代表
アクサースタルクを持つフィリップ・スタルク
アクサースタルクは誕生以来、常に人気です。コレクションが成功した理由はどこにあると思いますか?

PS// 余分なものが無いからです。確かな品質、確かな知性、確かなビジョン、確かなエルゴノミクス。そういうものに基づいた、デザインにおける明確なビジョン。そして流行に全く流されないコレクションというものが、間違っていなかったからです。
アクサースタルクコレクションのアイデアの源
それでは、これからの25年について伺いましょう。このコレクションは、どう発展していくのでしょうか?

PS// 誰にも分らないですよ。25年後には、生きているか死んでいるかも分からない。その間に (海面上昇によって) 水没する場所もあり、深刻な水不足に陥る場所もあり、水が汚染される場所もあり、それで命を落とす人々が出てくるでしょう。水は誰にとっても要なんです。この喫緊の課題に、私たちはどう進んでいけばよいのでしょうか?肝心な問題はそこです。繰り返しになりますが、今この時も誰かが亡くなっています。素晴らしい文明が、今よりももっと早く失われていく様も見てきました。25年経ったら、水栓がどうなっているのか?私には分かりません…。水 (を取り巻く環境) がどうなっているのか、見当もつかないからです。
アクサースタルク水栓

最後の質問です。アクサースタルクコレクションは、あなたの仕事にとってどのような位置づけなのでしょう?コンセプト全体を表すような存在でしょうか?

PS// 私はインテリなタイプではないんです。複雑なことをじっくり考えたりできない。ただ、自分は物事の心臓、骨格、背骨、核を見つける方法を教えてくれる直観を持ち合わせています。このコレクションも、まさにそういうものです。有益な仕事というものを示す最高の例であろう理由は、もしかしたらそこにあるのかもしれません。

プロフィール // フィリップ・スタルク

現代で最も有名かつ影響力を持つと考えられるデザイナー、フィリップ・スタルクは、地球環境への懸念とより良い世界へのビジョンに突き動かされている。何ものにも囚われない自由な精神は、その才能の深さと幅広さからも広く知られ、手がけたデザインはスピーカー、シャンデリア、オートバイ、メガヨットにまで至る。彼の手によるホテルは熱狂的なファンのアイコン的存在にまでなっているほか、デザインした日用品も、壮麗なインテリアデザインに勝るとも劣らない魅力を放つ。

フィリップ・スタルクの紹介ページおよび公式サイトもご覧ください。

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