ペーター・イッポーリトとパートナーのシュテファン・ガーベルが、シュトゥットガルト中心部の外れに位置するヴィルヘム時代のこの住居を見つけたのは、全くの偶然でした。建築家とテキスタイルデザイナーである2人は、リノベーションと家具の調度を行う作業の途中で、普段なら顧客を案内する出張の時のような小旅行に出ました。それは創造性と経験、記憶と記録、開かれた心、自分に正直であることを再認識する発見の旅となり、たどり着いた場所がメゾネット P155でした。2人が「ホームベース」と呼ぶ2階建て290㎡のこの住居を購入し、安らぎの場と社交の場の両方に使用しています。バスルームの水栓にはアクサーウルキオラを選択。このコレクションのデザインと個性に感銘を受けていた2人のクリエイターによる熱いリクエストでした。
この部屋にはカットケーキのように先が尖った特殊な一角があったり、ファサードから床やドア、間取りに至る内部の原型が歴史的建造物としての保護対象であったりと、夢の部屋の実現には細かな点で難所がいくつも存在しました。また、ペーターとシュテファンはヴィルヘルム時代特有のホールを中心に周りを部屋が囲むような間取りの持ち味はそのまま残しながらも、ゆったりとした広さが得られるように手を加えようと考えていました。この胸が躍るような設計プロセスを、2人は「既存のものと変更不可能なものの精査」と呼びます。こうしたステップを踏むことで、彼らはユニークな住まい、そして彼ららしい暮らしを手に入れたのです。
建築家であるペーターが所属する設計事務所「イッポーリト・フライツ・グループ」は他分野からプロが集まったチームで構成されており、クライアントやターゲットのアイデンティティと希望に丁寧に向き合います。その目的は常に、ユーザーそれぞれに合わせたコンセプトを提示すること。地域住民とその地を訪れる観光客が経済や美観を超えた価値観に気づき、最終的には互いにとって長く機能するような関係性が生まれる余地を提供することです。
このアプローチを反映したのがメゾネット P155です。各旅先で見つけたモノやデザインの古典とも言うべき名品、自らデザインしたモダン家具などを生き生きとディスプレイしたこの部屋は、一見すると個人の思い出や家具がごちゃ混ぜになった空間のように思えます。しかし、このコラージュが生み出す全体的な調和の効果からは、演出を手がけた住まい手のクリエイティブな筆致がうかがえます。区切られた部屋に連続性を持たせる黒いヘリンボーンの床は各部屋をつなぎ、アシンメトリーな壁面開口がさらにそれぞれのエリアをつなげ、すべてが光とコントラストの連続的な効果を演出しています。この部屋に統一感のある美を与え、いつ見ても新たな発見と経験をもたらす総合芸術にまで昇華したものが、彼らの個性なのです。
彼らはメインバスルームの中心に大きな鏡を据えた洗面台を置き、その周りにシャワーブースと浴槽を配置しました。黒い木のフローリングはシャワーブースの所で床から天井下の壁までを覆う石灰岩タイルに変わり、明るい木肌の特注家具とサーモンピンク色の高い壁と相まって、温かみのある雰囲気を作り出しています。窓際に設置したバスタブからは外の景色を楽しむことができます。住居に当たり前のように存在するバスルームは、2人が日常から解き放たれる空間です。ますます加速するデジタル社会とは逆に、朝はゆったりとシャワーを浴びて1日をスタートし、夜は日中の疲れをさっぱりと洗い流す時間を用意してくれるのです。収蔵作品のようなアクサーウルキオラコレクションの高級感あふれる水栓は、まるで2人の人生をそのまま表現するかのように完璧に空間になじんでいます。もちろん、水が出て心地よさを味わうという本来の役目も、しっかりと果たしています。
撮影: Zooey Braun、Eric Laignel